♪AOR Album Review #32♪ Randy Goodrum ♪

稀代のメロディ・メイカーであるRandy Goodrumという人は、言わずと知れた70年代から活躍するAOR・Pops系の名作曲家ですが、80年代前半には、自ら歌ってソロ・アルバムを発表しました。それが、ここに紹介する「Fool's Paradise」という事になります。(ただし、このアルバムは本国アメリカではお蔵入りとなってしまい、ここ日本だけでの発売のようです)

本作では、非常にジャジーで味わいのある、落ち着いた大人のための晩秋向け!?AORが展開されています。もともとRandyは、声の張り&伸びのある澄んだ歌声の持主ではなく、ヘタウマ系(すみません･･･)なんですが、非常に味があって優しさに満ち溢れた歌声の人です。もちろん、このアルバムに収められた全10曲のどれもがクオリティの高い楽曲となっており、曲作りのうまさが光っています。だからこそ、後にDavid Foster、Jay Graydon、Dave Grusin等にも認められ、一緒にコラボレートする仲になっていきます。

また、本作品のレコード・ジャケットもまさに収められた楽曲イメージそのまんまで、哀愁味を帯びたデザインとなっていて、個人的にはとっても気にいってます。20～30人も客が入れば店内が一杯になるような、街の外れの薄幸そうなうらぶれたBarで、一人こつこつと歌う(あるいは、4人ぐらいのシンプルな編成のバンドで、リラックスした演奏を聴かせる)雰囲気のジャケットに、たまらなく共感してしまいます。AORって、Jay GraydonやDavid FosterのAIRPLAYアレンジに見られるような、確固たるアレンジ・音作り・編成で、しっかりとした構築系の曲を聴かせる事も魅力的ですが、このアルバムに見られるような、メロディのいい良質曲をシンプルな編成でリラックスして聴かせる事にも、醍醐味を感じてしまいます。

また、このアルバムでは、「歌声の味わい&楽曲の良さ」に加えて、もう一つ耳を奪われてしまう事があります。それは、本アルバムで全曲のDrumsを担当しているJeff Porcaroのプレイです。どの曲も派手さはないものの、よくよく聞くと、いろんなリズム・パターン(8ビート、シングルorダブル16ビート、ハーフタイム・シャッフル)を駆使した上で、歌を大切にしたメリハリの効いた演奏をしており、歌物のバックではこんな感じで叩くんだ・・・というお手本のようなプレイを披露しています。とっても、フロントが演りやすいドラムだと思います。

本作への参加ミュージシャンは、(Produce)Randy Goodrum、Elliot Scheiner、(Key)Randy Goodrum、(G)Steve Khan、Jeff Southworth、(B)Neil Jason、(Ds)Jeff Porcaro、(Sax)Timmy Cappello、(Vo)Mary MacGregor、Beckie Foster etc.となっています。特に、スタジオ・ミュージシャンの有名どころがずらりと並んだ感じではないですが、とにかく各人の渋～いプレイが堪能できます。

ここでは、本アルバムに収められた楽曲一つ一つの紹介は省略しますが、過去Randy Goodrumがいろんなアーティストに提供してきた楽曲を、一度思いつくままに羅列してみたいと思います。挙げ出すと、まじでキリがないです。すごい人です。フ～(笑)。
「Love Lies、That's Why/Michael McDonald」「Foolish Heart/Steve Perry」「Haunting Me、Somewhere Between Old and New York/Dave Grusin」「Who's Holding Donna Now/DeBarge」「Won't Let You Lose Me/David Pack」「20-20/George Benson」「I'll Be Over You/TOTO」「If She Would Have Been Faithful/Chicago」「Every Little Hurt/Seiko Matsuda&David Foster」「Finding Each Other/Naoko Kawai&Steve Lukather」「Rest Of The Night/Natalie Cole」「Along Love's Highway/David Benoit」etc.・・・まだまだ一杯あります。
それにしても、どれもメロのはっきりした曲が多いですよねぇ。一度聴けば、すぐに口ずさめるほどの印象的なメロディです。

あと、「Fool's Paradise」以外のRandy Goodrum自身のソロ・アルバムとしては、「Caretaker Of Dreams(1991年)」「Words and Music(1994年)」の2枚がお薦めです。Jay Graydonマニアの方には、何といっても「Words and Music(1994年)」の冒頭に収められた「20-20」での約1分にも及ぶ長尺のギターソロが、語り草となっており必聴ですよね!!!。

（2005/11/26 up by Jeffrey)