♪AOR Album Review #29♪ Jack Wagner ♪

80年代前半の有名な全米TV番組である「ジェネラル・ホスピタル」に出演していた関係から、俳優兼シンガーとして、当時絶大な人気を博したのが、このJack Wagnerです。デビューは1984年で、ドラマでもロック・シンガーとして歌うシーンが放映されたようですが、その好リアクションを得て制作されたアルバムが1枚目の「All I Need」という事になります。しかも、発売元がQuincy Jones主催の「Qwestレーベル」でしたので、Quincy自らがJackの音楽的な才能にはかなり注目していた事がうかがえます。このアルバムからは、Glen Ballard&Clif Magness、David Pack共作によるタイトル曲「All I Need」が全米ACチャートで１位を獲得する大ヒットとなりました。Jack Wagnerと言えば、まずこの曲!!!という方が多いと思います。その他、アルバムにはいい曲がたくさん入ってますが、中でもアルバム・ラストを飾る「Lady Of My Heart」は、David Foster&Jay Graydon、Glen Ballardによる共作ですので必聴ですよね。

さて、前置きが長くなりましたが、そんな「All I Need」の好リアクションの後を受けて、翌年1985年に制作されたのが本作「Lighting Up The Night」という事になります。本作も前作同様、Qwestレーベルからの発売で、プロデューサーはGlen Ballard&Clif Magnessの二人が、引き続き担当しています。

本作への参加ミュージシャンは、(Key)David Foster、Jeff Lorber、Jai Winding、John Van Tongeren、Larry Williams、Glen Ballard、Clif Magness、Marcel East、(G)Michael Laudau、Dann Huff、Clif Magness、(B)Nathan East、Dennis Belfield、Davey Faragher、(Ds)Mike Baird、Hercules Dinwiddie、(Tp)Jerry Hey、Gary Grant、(Tb)Bill Reichenbach、(Sax)Larry Williams、Joel Peskin、(Perc)Paulinho Da Costa、(Back Vo)Siedah Garrett、Clif Magness、(Duet)Valerie Carter etc.となっています。

アルバムの主だった曲を紹介ですが、その前に…個人的な感想ですが、アルバムに収められた曲の粒立ちの良さにおいて、1stアルバムよりもこちらの2ndアルバムの方が上ではないかなあ…と思ってます。←（主観です（笑））

私がこの2ndアルバムで個人的に好きなのは、②「Lighting Up The Night」、③「I'll Be There」、⑤「Too Young」、⑦「If She Loves Like She Looks」、⑧「I Never Said Goodbye」、そしてラストの⑩「Love Can Take Us All The Way」でしょうか…。

②「Lighting Up The Night」は、Diane Warren&Jeff Lorberの共作という珍しい組合せによる、ちょっとトロピカルで陽気な雰囲気を醸しだすミディアム曲。夏の日差しがきつい浜辺で、陽気に体を動かしながら聴きたくなるような曲です（笑）。Jeff LorberのシンセとDann Huffのリズム・ギターが何ともいい味を出してます。

③「I'll Be There」は、元PiecesのメンバーであるGeoff Leibによるバラード曲です。大成功した「All I Need」を完全に意識した作りですが（笑）、個人的には、むしろこちらの曲の方が好きだったりします。それにしてもGeoff Leibという人…あまり注目されませんが、なかなかいい曲を書く才人で要注意人物です。

続く⑤「Too Young」は、いよいよこのアルバムのハイライト曲で、こちらも絶品のバラード曲です。それもそのはず、この曲の作者はDavid Foster&Jay Graydon、Steve Kipner、Donny Osmondとなっています。すごいっ!!!!。実はこの曲…Donny Osmond自身が1984年に録音した「411」というアルバムに収められていた曲のリメイクなのです。この「411」というアルバムは、全曲でDavid Foster&Jay Graydonがコラボレートしたアルバムなのですが、何らかの事情によりいまだお蔵入りしたまま、一度も陽の目を見ていないという幻のアルバムです。以前、Jay Graydon自身が「Donny Osmondのアルバムは、素晴らしい内容で、自分自身でもその出来には満足している」と語っていました。良質なAORアルバムのほとんどがＣＤ化されている現在において、“Jay&Davidの全曲コラボによる唯一残された最後の砦”がこの「411」と言えるでしょう。それにしても、この「Too Young」…どこをどう聴いても、間違いなく、David Foster120%アレンジの曲ですよねぇ（笑）。

⑦「If She Loves Like She Looks」は、Glen Ballard&Clif Magnessによるアップテンポのノリノリ・ナンバー。う～ん、Jerry Heyによるホーン・アレンジがやっぱりカッコいいです。さすがだなあ…。

⑧「I Never Said Goodbye」も、Glen Ballard&Clif Magnessによる作曲。3分間以下という短いバラード曲ですが、途中に出てくるGlenのシンセが何ともいい雰囲気を醸し出してます。

そして、アルバム・ラストを飾る⑩「Love Can Take Us All The Way」。この曲は、デュエット・バラード・隠れ!?ベスト５に入るほどの素晴らしい出来のバラード曲で、Varelie CarterとJack Wagnerが珠玉の掛け合いを披露しています。晩夏の黄昏時に、海辺で彼女（or彼）と一緒に夕陽を見ながら、聴いていたい…自然に涙が溢れ出て…そんなシチュエーションにはまりすぎる曲です（爆）。大好きな一曲です。

このアルバムの後Jack Wagnerは３枚のアルバムを発表しますが、次の「Don't Give Up Your Day Job」(1987年)が今一の出来で（笑）、「Alone In A Crowd」(1993年)はJay Graydon作品が含まれていたりして、なかなかの良作◎です。その後、今年に入って、Jeff Pescettoプロデュースによる「Dancing In The Moonlight」(2005年)というアルバムを12年振りに発表しましたが、こちらはまあぼちぼち…（笑）という出来です。

それにしても、Jack Wagnerは1959年生まれですから、今年で46歳という事になりますが、とてもとてもそんな風には見えないです。相変わらず、カッチョいい風貌のイケメンです。俳優業ばかりじゃなく、音楽ももっとがんばってね（笑）。

（2005/07/20 up by Jeffrey)