♪AOR Album Review #22♪ The Keane Brothers ♪

KeyboardのTom KeaneとDrumsのJohn Keane。この二人の兄弟によるユニットがこの「The Keane Brothers」です。父親のBob KeaneがJazzミュージシャン・プロデューサーであり、母親もシンガーであった事もあり、幼少期より音楽に囲まれて成長し1977年に発表された二人によるファースト・アルバムがこの「The Keane　Brothers」なのです。この当時二人は、まだ13歳と12歳という事ですから、ほんと早熟ですしすごい才能だと思います。特にTom Keaneは本作収録の全10曲中9曲の作曲をしていますから、13歳の子供にしては恐ろしい程の作曲能力です。

さて、この二人のデビューですが、実は本アルバム発売の前年(1976年)に遡ります。本作にも収録されている曲「Sherry」をシングル・デビュー盤として発表しますが、これが全米84位にチャートインした事によりそれに気を良くしたレコード会社が翌年、本腰を入れて制作したのが本作「The Keane Brothers」という事になります。本作は、プロデュース&アレンジに我らがDavid Fosterを向かえ、バックに一連のLAミュージシャンを従えて制作されています。
(Produce、Arr、Key)David Foster、(Key、Vo)Tom Keane、(G)Jay Graydon、Larry Carlton、(B)David Hungate、Lee Sklar、Mike Porcaro、(Ds)John Keane、Jeff Porcaro、Ed Greene、Harvey Mason、Nigel Olsson、(Back Vo)Bill Champlin、Carmen Twilly、Vennette Gloud、(Horn Arr.)Tower Of Power Horns etc.　となっています。

このアルバムに収められた曲は、どの曲もなかなかPopな調子で、この手のキャッチーな曲が好きなリスナーにはたまらない内容となっています。(AORというよりは、完全にPopsですね)　個人的には、③「Goodbye Summer」なんて“夏休み終わり間近の中学生!?”みたいな感じがして、甘酸っぱい感覚が気に入ってます(笑)。次の④「God Loves Little Girls」もお気に入りで、間奏で手でくるJay GraydonのギターとDavid Fosterのシンセによるユニゾン・ソロがなかなか決まっててカッコいいですよねえ。後にAIRPLAYを結成するこの二人は、この時代、ギターとシンセのユニゾン・ソロを行う事が結構多く、Jaye P.Morganの「I Fall In Love Everyday」とかAtittudesの「Changes」という曲などでも、このパターンのユニゾン・ソロを聴く事ができます。

TomとJohnは、このアルバムの後の1979年には「The Keane Brothers」名義として、もう一枚「Taking Off」というアルバムを発表しています。この「Taking Off」では、全10曲中2曲だけDavid FosterとDavid Paichが共同でプロデュースを行っていますが、この2曲がなかなか良い仕上がりで、ストリングスやMoog Bassの使い方等がむちゃくちゃカッコいい内容となっています。

また、この2年後の1981年には無事成長し!?大人になった二人は、4人編成のバンド「Keane」として日本向けに再デビューする事になります。このアルバムからは、「Tryin' To Kill A Saturday Night」「My Special Way」等のヒットが生まれ、曲調もPopsというよりは完全なRockになっています(笑)。特に「Tryin' To Kill A Saturday Night」は“ドライヴィング・サタディ・ナイト”という邦題が付けられ、当時TDKカセット・テープのTVCFとしてもガンガンにオンエアされていました。そのTVCFの映像には、「Keane」の4人がバンド演奏してるものが採用されており、今から考えるとむちゃくちゃ貴重なものですよね。

そして、またその1年後の1983年にKeane名義でもう1枚「Today、Tomorrow And Tonight」というアルバムをリリースします。このアルバムからは「Oh Oh Oh」「I'm Ready Tonight」等がシングルカットされますが、いずれもヒットせず、翌1984年にKeaneは解散してしまいます。(ちなみに、このアルバムからは、現シカゴのBassistであるJason Scheffがレギュラーメンバーとして参加していただけに残念です)

Tom KeaneとJohn Keaneは、当時から現在に至るまでそれぞれ作曲家、ミュージシャンとして活躍し続けるわけですが、特にTom Keaneの作曲能力には非凡なものがあり、「Through The Fire/Chaka Kahn」「Will You Still Love Me?/Chicago」「One Step Over The Boaderline/Peter Allen」等の名曲を産んでいます。もちろん演奏能力にも優れ、Boz Scaggsのツアーメンバーとして来日公演に参加したりもしていました。John Keaneのドラムに関しては、派手さは無いものの「The Best Of Me/David Foster」がベスト・ワークスの一つではないか･･･と考えています。(このアルバムは、絶対にJohn Keaneの生ドラムを使った事が一つの勝因です(笑)

いずれにしましても、ここんとこ二人とも活躍がやたら地味だなあ･･･と思ってしまいます。二人共がんばれ～(笑)。同世代だけにすごく応援していまーす。

（2004/11/21 up by Jeffrey)